果しなき流れの果に エスパイ 復活の日 明日泥棒 日本アパッチ族 継ぐのは誰か? 日本沈没 こちらニッポン・・・ さよならジュピター 見知らぬ明日 題未定 首都消失 短編集 地球になった男 最後の隠密 牙の時代 アダムの裔 宇宙漂流 五月の晴れた日に 機械の花嫁 空飛ぶ窓 夜が明けたら 春の軍隊 サテライト・オペレーション 神への長い道 蟻の園 物体O 夜の声 |
小松左京について
初めて読んだのは「エスパイ」あたりか。けっこう軽いノリで楽しめた。その後「日本沈没」でハマり、「復活の日」、「日本アパッチ族」ときて「果しなき流れの果に」へ移行。その後数年は短編も取り混ぜて、好んで読んだ。
長編で読んでいないのは2〜3本程度であり、かなりお気に入りの作家。
その想いが強くて、けっこう批判的に読んだ時期もあった。
長編は十数本。短編にいたっては500編以上発表しており、当時のアダ名「コンピューター付きブルドーサー」はダテではない。ただ、それらは彼にしてみれば過去の作品であり、その後の創作活動は活発とは言えない。
多少の歯がゆさはあるが、ライフワークである「虚無回廊」の完結をそっと待っている状態。
ちょっと分析 昭和6年(1931年)生まれ。作品発表は1953年からだが、1962年になるまでは年1作以下のペース(まだアマチュアの時代)。*1 自身のライフワークとして「虚無回廊」に取り組むが、阪神大震災で、パニックSF、社会派SFの第一人者として注目を集め、それが結果的に作家というよりコメンテーター主体の活動をさせる状況となっていく。 *「虚無回廊」については、細部の構築等で多少問題もあるが、「果しなき流れの果に」というすさまじい本を書いた作家の到達点として、「果しなき・・・」と併せ一人でも多くの人に読んでもらいたい。 |
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*1 無名時代は、漫談の脚本書きもやっていたらしい。
奥さんが病気で入院した時に、退屈を紛らわすため、毎日必ず面白い話を一つ書いて見舞いに行き、読ませた事があったとか。
短編集
地球になった男 1971年 新潮文庫 | ||||||||||||||||||||
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最後の隠密 1974年 角川文庫 | ||||||||||||||||
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アダムの裔 1973年 新潮文庫 | ||||||||||||||||||||||||
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宇宙漂流 1976年 角川文庫 | ||||||||||||||||
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機械の花嫁 1987年 ケイブンシャ文庫 | ||||||||||
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牙の時代 1975年 角川文庫 | ||||||||||||
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五月の晴れた日に 1983年 集英社文庫 | ||||||||||||||
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サテライト・オペレーション 1977年 集英社文庫 | ||||||||||||||||||||
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空飛ぶ窓 1976年 文春文庫 | ||||||||||
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春の軍隊 1979年 新潮文庫 | ||||||||||||||||
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夜が明けたら 1977年 文春文庫 | ||||||||||||||
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蟻の園 1974年 ハヤカワ文庫 | ||||||||||
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神への長い道 1975年 ハヤカワ文庫 | ||||||||
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物体O 1977年 新潮文庫 | ||||||||||||||||||
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夜の声 1978年 集英社文庫 | ||||||||||||||||||
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ゴルディアスの結び目 1998年 ハルキ文庫 単行本初出は1977年(角川書店) | ||||||||
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題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
題未定 | 小松左京 | 角川文庫 |
これはちょっとイマイチ。物語というより、エッセイ。なぜ「題未定」という題なのか。ラテン語だったかの
ダイミテがどうのとか、他のこじつけとかいう解説が長い。小松ファンでなかったら数ページで「拒絶」もの。
この頃の小松氏はスランプだったとしか言いようがない。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
こちらニッポン・・・ | 小松左京 | 角川文庫 |
突然、人の居なくなった街。街だけでなく、それは日本全体。そして、それは世界全体の現象であることが
判明。世界中に残された人類は数十名。システムを再構築していく過程が興味深い。
読後感は案外爽やかだった。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
首都消失 | 小松左京 | 角川文庫 |
ある日突然、東京都が筒状の雲に覆われて隔離されてしまう。外界と完全に遮断されてしまった東京。
朝日新聞に連載になった時はかなり喜んで、毎日楽しみにしていたが、雲に遮断されてからの話が非常に
長く、新聞小説のテンポとはかなりかけ離れていたため、結局挫折。
モチーフは彼の短編「物体O」から採用している。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
継ぐのは誰か? | 小松左京 | 角川文庫 |
「チャーリーを殺す」大学の同じ研究室の仲間が、予言のとおり殺される。犯人は誰か?
特殊な能力を持った種族。迫害を避け、つつましく生きてきたが、そこにトラブル。人類が目指すべき形態は何か。
最初読んだ時はかなり新鮮な印象があった。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
日本アパッチ族 | 小松左京 | 角川文庫 | 1973 |
鉄を食べる人種「アパッチ族」もう、相当昔に読んだきりなので、ネットで調べて「あー、こんな話だったよな」
という程度のレベルだが、人間がいかにして鉄を消化し、人体構造を「鉄化」していくか、すごい迫力で
描かれていたのは記憶にある。本当らしく見せる、というのがSF作家の真骨頂なのだろう。 ●
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
見知らぬ明日 | 小松左京 | 角川文庫 | 1973 |
中国奥地で謎の交戦。内紛かと思われたが、実は宇宙人の侵略。
当初はマイナーな、国レベルの問題だったのが、実態が明らかになるにつれ、国対国、世界としてどう地球を
守るかの話に移行していく。ただ、どう考えても「明日」はないような印象が強く、読後感は暗かった・・・。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
さよならジュピター | 小松左京 | 1980 |
近未来の地球。新たな光源を求めて木星を第2の太陽にしようとする計画をめぐる物語。
なんか「エウロパ」に生命を宿らせる(2010年宇宙の旅)のとごっちゃになって、いまいちコメントがあやしい。
映画と小説、どちらも見たが、あまり印象がない。映画の方は三浦友和のダイコンぶりが際立っており、また
教団の教祖(?)がタメゴローみたいなおっさんでワラタ。
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題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
明日泥棒 | 小松左京 | 1965 |
ぼくの家に突然現れた、ヘンなおっさん「ゴエモン」。最初は招かれざる客に対する微妙なリアクションの面白さ。
中盤まではナニワのお笑い路線。後半で話がだんだんシリアスに。
笑わせながらも現代社会、物質文明に対する鋭い批判を織り交ぜながらお話は次第にキケンな方向へ。
最終的にとんでもない決断を迫られる「ぼく」
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
日本沈没 | 小松左京 | カッパノベルズ | 1973 |
一人の科学者が、日本海溝の底で生じている異変に気がつく。次々と起る群発地震。
次第に全貌が明らかになっていく。他でも言ったが、本当に描きたいのは地震の惨状ではなく、沈没によって
国粋意識の強い日本人が世界中に散らばっていく姿。国土を失った者のたどる道。 ● ●
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
復活の日 | 小松左京 | 角川文庫 | 1975 |
細菌兵器が招く、人類滅亡の危機。当時DNA:デオキシリボ核酸、という言葉もメジャーではなく、この数年後に
ようやく言葉として使われる様になった。細菌パニックものの草分け。 ●
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
エスパイ | 小松左京 | 角川文庫 | 1977 |
まあ、軽いノリのSF。超能力者の諜報集団「エスパイ」それぞれのメンバーが特徴ある超能力を使って任務を果たす。
東西の緊張を軸に、指令が下る。
映画化されているが、由美かおるのとびきり素晴らしい体形しか記憶がない。 ● ●
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
果しなき流れの果に | 小松左京 | 角川文庫 | 1974 |
小説を読むためのガイド(自分用) ●
プロローグ
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中世代の日本、ティラノザウルスが金属の筒を見つける。金色の電話器。
第1章 象徴的事件
野々村は大泉教授の助手。野々村と番匠谷教授との出会い。中世代の地層から出土した砂の減らない砂時計(クロニアム)。葛城山の中腹、謎のテラス。
第2章 佐世子。現実的結末
佐世子の来訪。
大泉教授の異変及びその後野々村の失踪(車中から)。
エピローグ(その2) その後の佐世子。
第3章 事件の始まり
保安省秘密調査部ムッシュウ・M。保険会社の調査員を装い、研究所をうろついていてつかまる。宇宙空間の研究所へ(エレベータ)。
電子脳衛星5基による内部調査。未来からの干渉を示唆。ムッシュウ・Mが資料衛星No.5を破壊。
第4章 審判者
第7部部長とアイの会話。「彼」の存在。
選抜者。第26空間「収穫」
松浦。リック・スタイナー
太陽の異変により、火星への避難準備。
ハンス(松浦の親友)。恋人はエルマ。エルマは火星への避難民に選別され、ハンスは選抜委員として地球に残る。終末寸前の時に宇宙人が飛来、連れ去られそうになるが、同時にハンスを引き止める者の存在。
火星避難民の下へも宇宙人が飛来、人類の存続に手を貸すとの申し入れ。評決の寸前に反対票が1票投じられる。驚く宇宙人代表。
第5章 選別
宇宙人の提供した宇宙船に乗せられた松浦。エルマとの再会。宇宙人に対する疑い。
アイの組織に対する妨害者の存在。地球での収容寸前に選抜者を横取り。選抜は、階梯を進むための手段。
野々村を追うアイ。1960年代のニューヨーク。
リック・スタイナー。宇宙船からある惑星に降ろされる。アントノフ教授。
敵からの襲撃。過去の地球に来たとの推測。
第6章 襲撃
ルキッフはNの同僚または上司。Nの存在。Nは野々村。時空間を移動して敵と戦っている。
部屋に閉じ込められた松浦。縮んでいく部屋、そして脱出。
第4階梯に進むためのテスト。超人類への道。そこへ攻撃。松浦を助ける声。
ジャコモ。野々村失踪のヒント。Nの人格は?
Nとジャコモ、敵のアジトを襲撃。深追いして危機に。Nは寸前に脱出。
助かった松浦。「声」の話で裏返された空間の存在を知る。声はアイ。
エルマは松浦の子供を妊娠。ハンスは敵側に。
第7章 狩人たち
I・マツラ。アイと松浦の複合意識体。連邦特別捜査官。
日本沈没のエピソード挿入。「獲物」を探すマツラ。
もうひとつの世界は全て滅んだ。
空襲時の日本。野々村夫婦が外人から子供を預かる。
Nは恐竜時代に出現。金色の電話器に応対。外には恐竜。
Nを追うI・マツラ。宇宙のはてからはてにまで広がる網を張る。
脱出したN。ネグロイドに捕まる。
ホアンと会い、ルキッフが後継者をNに選んだことを知る。
この場所は日本である事を教えられる。
エネルギー恒存則。全宇宙に渡って網を張るマツラ。
第8章 追跡
マツラが辺峡の惑星に調査に向かう。ワゴオとの会話。番匠谷教授のテレビ残像。
この地はかつてのパリ。
ワゴオの降等の原因となる事件についての証言。
日本にいるNの状況。葛城山での移動装置準備。
エン。
マツラ。網を絞り込む。
リック・スタイナーとの再会。N、エン、ホアンの脱出準備。
第9章 狩りの終末
過去のフィードバックを提案するN。
迫る追跡の手。
Nとホアンは時間機で脱出を試みる。
戦国時代に果心という怪人物として紛れ込むホアン。
追い詰めるマツラ。ホアンは毒を飲み自決。
Nは脱出。
タウ・ケチ第5惑星。時間密航者クラブ。
ノアヴィル氏の演説(実はN)。
追跡を受け、2台の時間機を接続し無謀な脱出を敢行。
第10章 果しなき流れの果
すさまじい勢いで未来に運ばれる野々村。
呼びかける意識。超意識の刈り取り、収穫。
Nの意識を吸収した第2階梯超意識体アイは、違和感を感じ、松浦と野々村が親子であった事を知る。
「上昇」をはじめるアイ。「とまれ」制止する階梯概念。
燃え尽きるアイ。
エピローグ(1)
アルプスで発見された東洋人が50年振りに覚醒。
日本に戻り、葛城山麓に戻る。佐世子のもとに行き、居付くことになる。
最後に自分の長い物語を語り始める・・・・・
コメント
初めて読んだのは二十代前半。その後延々と読み返し、多分10回以上は読んでいる。
上記のガイドを読むことなく全体の把握が出来たら、相当な読解力があると自負していい。
この小説のモチーフとなっているのは「松浦佐用姫伝説」。恋人と別れ、その男を待ち続けてとうとう石になってしまう。羽衣、浦島と並んで3大悲恋物語と言われているもの。松浦は「マツラ」と読む。
テーマは「流れ」。ふとしたきっかけから、時間と空間の交錯する異次元世界に足を踏み込んだ男。
さまざまなエピソードを経て描かれる者たち。その前後関係は複雑に交差し、初めて読む者を混乱させる。
次第に明かされていく「階梯」の概念、宇宙の存在または意識。
小松氏は「日本沈没」に代表される様に、日本人(民族)に対する思い入れの激しい作家であり、「日本沈没」は基本的に、沈没によって自身の棲家を失った日本人が、世界の中でどの様にアイデンティティーを保ちながら生存していくかのドラマ。沈没のドタバタは大した要素ではない。太平洋戦争での敗戦によって国としての根拠を失った時、少年時代を過ごしていた氏の人生観みたいなものが、根底に流れている。
「果しなき・・・・」の中にもその思いはある程度込められているが、最も言いたいのは「宇宙は意識体」という概念。人間が行う、「生きること」(精神活動)は何のためか。生き続けたあと、何が残るのか。「宇宙」という意識体をより高いステージに上げるために、人類を含む生命体の存在意義がある。読み方によっては十分宗教書にもなる。ただ、後半というか最終章では小松氏自身が、疲れたのか自家中毒に陥ったのか、ややまとめに走った嫌いはある。
注、現在「ハルキ文庫」から発行されている(IEBN4-89456-369-X
C0193)。
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