小松左京

果しなき流れの果に  エスパイ       復活の日  明日泥棒  
日本アパッチ族     継ぐのは誰か?  日本沈没  こちらニッポン・・・
さよならジュピター    見知らぬ明日     題未定   首都消失
短編集
地球になった男   最後の隠密  牙の時代  アダムの裔  宇宙漂流
五月の晴れた日に  機械の花嫁  空飛ぶ窓  夜が明けたら 春の軍隊
サテライト・オペレーション  神への長い道  蟻の園  物体O     夜の声 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小松左京について

初めて読んだのは「エスパイ」あたりか。けっこう軽いノリで楽しめた。その後「日本沈没」でハマり、「復活の日」、「日本アパッチ族」ときて「果しなき流れの果に」へ移行。その後数年は短編も取り混ぜて、好んで読んだ。
長編で読んでいないのは2〜3本程度であり、かなりお気に入りの作家。
その想いが強くて、けっこう批判的に読んだ時期もあった。

長編は十数本。短編にいたっては500編以上発表しており、当時のアダ名「コンピューター付きブルドーサー」はダテではない。ただ、それらは彼にしてみれば過去の作品であり、その後の創作活動は活発とは言えない。
多少の歯がゆさはあるが、ライフワークである「虚無回廊」の完結をそっと待っている状態。

 

ちょっと分析

昭和6年(1931年)生まれ。作品発表は1953年からだが、1962年になるまでは年1作以下のペース(まだアマチュアの時代)。*1
1963〜1973年までの約10年間が、作家活動としてのピーク。
その後映画化等で注目され、当時の文庫本ブームの波にも乗って、流行作家としての地位を確立。
ただし作品発表は急激にダウン。
その後出された長編の「さよならジュピター」、「首都消失」とも、題材のオリジナリティはやや希薄な印象がある。

自身のライフワークとして「虚無回廊」に取り組むが、阪神大震災で、パニックSF、社会派SFの第一人者として注目を集め、それが結果的に作家というよりコメンテーター主体の活動をさせる状況となっていく。
1988年以降の文は、全て評論(ノンフィクション)であり、短編も含め小説の発表はない。
残念ながら現在、書店で彼の作品を見ることはほとんど出来ない(ハルキ文庫で取り寄せは可能)。

*「虚無回廊」については、細部の構築等で多少問題もあるが、「果しなき流れの果に」というすさまじい本を書いた作家の到達点として、「果しなき・・・」と併せ一人でも多くの人に読んでもらいたい。

長編
題名       発表 映画化 
エスパイ 1964 1974
日本アパッチ族     1964  
復活の日 1964 1980
果しなき流れの果に      1965  
明日泥棒 1965  
ゴエモンのニッポン日記 1966  
見知らぬ明日 1968  
継ぐのは誰か? 1968  
日本沈没 1973 1973
こちらニッポン・・・・ 1976  
題未定 1976  
時空道中膝栗毛 1976  
さよならジュピター 1980 1984
首都消失 1983 1987
虚無回廊T 1986  
虚無回廊U 1986  
虚無回廊V 1987  
時空地球道行 1987  
短編 
年度 作品数 
1962 10
1963 33
1964 49
1965 95
1966 36
1967 22
1968 27
1969 35
1970 30
1971 44
1972 13
1973 22
1974 17
1975 16
1976 11
1977 11
1978 6
1979 4

*1 無名時代は、漫談の脚本書きもやっていたらしい。
奥さんが病気で入院した時に、退屈を紛らわすため、毎日必ず面白い話を一つ書いて見舞いに行き、読ませた事があったとか。

 

 

 

 

 

短編集

 

地球になった男       1971年   新潮文庫
コップ一杯の戦争 場末のバーのハイボールが戦争を触発。酒がなくなって戦争終結。
地には平和を 第二次大戦の日本の歴史を変更しようとする時間犯罪者。ただし、正しい歴史もベストなものかは疑問。
紙か髪か 紙をことごとく分解する菌が発生。防菌処理が開発されるが、副作用あり。
痩せがまんの系譜   未来で重要な役割を持つ者の子孫が、祖先の配偶者を見つける手助け(江戸時代の武士を連れてくる)。
御先祖様万歳  過去に通ずる穴が発見される。過去で女性と一度だけ関係を持つ。生まれた子が自分の曽祖父であるとの妄想。
日本売ります 宇宙人に日本を売った男。合法的手段で全ての土地の名義を変更し、持ち去る。
沼を恐れる幼児体験。甥が助けを呼ぶ声を幻覚と間違え見殺しに・・・
ぬすまれた味 若者が契約。味覚、性感を老人に奪われる。復讐のために体をくすぐり、狂った味覚のものを食べる。
蜘蛛の糸 芥川のパロディ。地獄から這い上がった亡者と地獄に落とされたシャカ。
地球になった男 まず、牛になる事から自分の能力に気付いた男。地球を壊滅させた償いに、別の宇宙での地球となる。

 

 

 

 

 

最後の隠密          1974年  角川文庫
南海太閣記 ウラ太閤記。信長は暗殺されず、戦艦を率いて「新日本島」を建設。
イッヒッヒ作戦 南方の小国が隣国の攻撃に対し、バイ菌類で対抗。
東海の島 紀元前千年の日本に来た時間旅行者が日本人の心の秘密を探る。
まめつま 家にとりついた幽霊に操られて主婦が夫を殺す。
昔の女 京都を散策に来た男。女と出会い関係を持つ。40年前に死んだ男女が他人の体を借りて思いを遂げる。
ぬけ穴考 新築した友人の家の床が抜け、洞穴が出現。異次元に迷い込む。
最後の隠密 徳川幕府お庭番が風呂から出現。最終的に割腹自殺。忠義、命を賭け得るもののない現代に対する風刺。
竜虎抱擁 武田信玄と上杉謙信。謙信が女性であるとの情報による歴史操作。

 

 

 

 

 

アダムの裔          1973年  新潮文庫
お召し 12歳になると人が消滅する世界。それが始まった頃の文書が発見される。
お仲間入り 宇宙との交信を願う人類。コンタクトに喜ぶが、来訪した宇宙人から納税申請書を渡される。
新都市建設 新都市が出来るのを喜ぶ若い世代と、それを悲しむ老人。新都市「平城京」の建設。
いかもの食い            何でも食べる特殊クラブを訪れた男。会員にあるものを食べさせる。その男の胃袋。いかもの食いの胃袋を食べる。
青空 スモッグの中で暮らす者。外の自然界に適応できず、スモッグの世界へ帰っていく。
アダムの裔 突如現れたペニス形状の生物。男性の未来の姿。形態の特殊化。
汚れた月 ホームレスの男2人。相棒を若い男に殴られ、その男に復讐。
人類裁判 他の生物をことごとく殺してきた人類が宇宙裁判に。バクテリアが弁護する。
模型の時代 何でも模型、の時代。ミクロの世界に飽きて巨大化。月の模型を宇宙で作ろうとしたが、先を越されていた。
せまりくる足音 老人を殺し、君臨してきた男の老い。仮装でごまかすが途中でバレる。
そして誰もしなくなった 首相が突然職務を放棄。それが次第に広がって社会全体が停止。
静寂の通路 妻の流産。正常分娩の急激な減少。環境ホルモンの罪か?。2歳の娘が妊娠。人類の存続メカニズム。

 

 

 

 

 

 

宇宙漂流            1976年  角川文庫
シロの冒険 「イナバのシロウサギ」のパロディ。
花さかじじい パロディ。枯れ木にタイムマシンの電線を巻き、灰を撒くタイミングで作動。
新サルカニ合戦 ロボットを題材にしたパロディ。
カチカチ山             何にでも化けられる生物。カチカチ山の童話でウサギとタヌキに。その後グリム童話の「人食い鬼」を読み始める・・・
キンタロウの秘密 キンタロウは天才児。自動翻訳機で動物とコンタクト。宇宙人の酒天童子を助ける。
ウラシマジロウ 宇宙人を助けたジロウ、星に連れて行かれる。帰りにタイムマシンを贈られるが、トラブルのため、老化。
むかし,むかし…… モモタロウのパロディ。
宇宙漂流 少年6人の乗った宇宙船が漂流(ジャンプ)。ある星に到達。星全体を覆う生命体「フィーター」。

 

 

 

 

 

 

機械の花嫁          1987年  ケイブンシャ文庫
終りなき負債      祖父からの負債を延々と引き継ぐ男。実は祖父の息子そっくりに作られたアンドロイド。自分自身が負債の元。
Dシリーズ 女性は機械には嫉妬しないことを利用してダッチワイフで成功するが、女同士の嫉妬に巻き込まれる。
機械の花嫁             要求を重ねる事で家事その他から開放された女に対し男は機械を徹底的に進化させて伴侶とする。
ヴォミーサ 落雷により「ロボット3原則」回路の狂ったロボットが殺人を犯す。回路の反転(Asimovの反対)。
SOS印の特製ワイン 遭難宇宙船でロボットにワイン製造を命じる。男の死後ロボットは男のハート(心臓)を酒の成分に。

 

 

 

 

 

 

牙の時代           1975年  角川文庫
ト・ディオティ 2つの家庭をさまよう男、諜報員。交錯する世界の中で娘を殺すが、殺したかどうかも不明。ト・ディオティ:何故かという事
サマジイ革命 徹底した延命治療世代の養老院。
牙の時代 釣りに行った夫婦が強暴化したヤマメを釣る。地球種に現れはじめた変動。
小説を書くということは 雑記。ストーリーはなし。
BS6005に何が起こったか BS(ブレイン・スター)6005に起こった異常。「涅槃空間」への浸入。ゴータマの意識、封印された分身。
毒蛇                モトシクロで「ヤツ:父親」を追い、殺した男。分断された「向こう」の世界に紛れ込み、また戻る。

 

 

 

 

 

五月の晴れた日に      1983年  集英社文庫
子供が神童。石の持つ能力。夫は子供に殺され、妻は子供と関係を持つ。子供を殺すが、お腹の子は生まれ・・・・
五月の晴れた日に 貴族と下僕の関係。貴族がアンドロイド。ロボットの支配により安定がもたらされるという誤解。
消された女 男の思念で消された女が男の恐怖心で再実体化。男は女の思念の力で実体化したもの。男を消すと女も消える。
比丘尼の死 800年に渉って男達を癒してきた尼が工事により山が崩されるとともに自殺。
宗国屋敷 離屋で侍女2人とひっそり暮らす男、実は連邦宇宙庁長官の息子。侍女はアンドロイド。
彼方へ 宇宙を隅々まで知ってしまった存在。宇宙の外に向けて飛び出す。
おえらびください            未来を3つ選べるコースで詐欺を働く者たち。ほとんどの客が破滅への道を選ぶ。その人数が増えるという事は・・・

 

 

 

 

 

サテライト・オペレーション  1977年  集英社文庫
女か怪物(ベム)か 孤独な航行の中で男の想像した女性が実体化。男の弟が復讐しようとするが、同席の男達の理想の存在となり・・・。
煙の花 煙を使う芸術を地球へ輸入するが地球では定着せず。前衛派の開祖が純地球産の煙の花「キノコ雲」を発表。
月よ、さらば 破産した地球。月を競売して宇宙遊覧星に。200年に一度しか見られない。
サテライト・オペレーション 自己生産を行う機械化星。異常増殖する部分を破壊して機能を正常化。人体に対するパロディ。
黴                金属を取り込んで増殖する物体。自己増殖系の中枢を破壊して阻止。意味のない繰り返し。人間批判。
飢えた宇宙 宇宙船の中でどんどん人が減って行く。長期間航行のための吸血鬼化。
おみやげブーム 月の石ブームでどんどん採取が進み、月が消滅。
星殺し<スタ−キラ−> 星の調査に来た男女。星は遺志を持った存在で人を誘惑。同性愛の男が星のせいで死んだ事を知り、星に復讐。
会合 太陽系創生時の話。人類の進化のために月の存在が必要だった。虚無、回廊という単語が引用されている。
割れた鏡 人類が滅んだ後の月に来た調査船。人類は最後に月面に顔を刻むが、消滅。

 

 

 

 

 

 

空飛ぶ窓            1976年  文春文庫
歌う女 レストラン付きのオペラ歌手と出会った男。彼女に惹かれるが友人に略奪され、彼女は自殺。彼女の後見人が復讐。
秋の女 お手伝いだった「お咲さん」に会いに行く旅。連れを請われた女性との因縁。平家物語との関連。
秋の女 過去に苦しい別れをした男がタヒチで女性と出会い、その面影を思い出す。狂気、愛惜、男は女に取り込まれて死ぬ。
黄色い泉 身重の妻と共に山に迷い込んだ男。妻は得体の知れない者たちと交わり、死ぬ。日本神話との対比。
空飛ぶ窓              北国の少女が中空に浮かぶ窓を見つける。違う場所に通ずる窓。子供が念じた想いが窓に投影。

 

 

 

 

 

 

春の軍隊            1979年  新潮文庫
春の軍隊 郊外の造成団地に軍隊が出現し、交戦状態に(国籍不明)。2日間で突然消滅するが、被害は現実。理不尽な暴力。
共食い 女を人質に取られて誘拐を決行する男。入った先で子供の親も誘拐されていた。奇妙な連環。星占いの特異日
こういう宇宙              宇宙を眺めるディスプレイを備えた店が林立するバー街で「遺跡」を発見。宇宙の基本定数を定める装置。
四次元オ  コ ラブホテルに入った男女。SEXの最中にショックで女が失神。男の「一物」が無くなるが異次元で実在。女のオ**コから宇宙が。
男を探せ 大親分の女に手を出して一物を切り取られ、女にされた男。自分の物を取り戻すが向きを変えて取付け自分と自分を…
薮の花 竹の中から生まれてきた娘多数。異星からの避難者で、sexは不可(構造上)。老夫婦を助けて暮らす。
オフー 不思議な植物「オフー」。栄養価が高くガンに対しても特効的に効く。地球外からの侵略。
DSE=SJ 旅に出かけた2人の前に素晴らしい名車。だがどこまでもつけてくる。男の大叔父との因縁。

 

 

 

 

 

夜が明けたら          1977年  文春文庫
ツウ・ペア 鋏で女を刺し殺した男。相手は双子の兄が無理心中で殺した女の妹。因縁話。
真夜中の視聴者 夜中にひとりでに点くテレビ。亡霊どもが見ている。死んだ息子にも見せるという事で交渉成立。
葎生(ムグラフ)の宿 たまたま道に迷った先で泊まった家が追いかけてくる。最後に家は燃え、男は道連れに。
秘密(タプ) 男が収集した神像を妻の妹が磨き、男は魔力のせいで妻を食べる。秘密を守るために男も食べられる。
長い部屋 殺人事件に巻き込まれた男。長い部屋のトリックは空間を曲げる装置。
夜が明けたら            深夜に地震があり、停電。電池を含む電気類が全てストップ。自転の停止。夜は明けない。
海の森 夜中に巨大なものが通る気配。石像の台座が捨てられたために古代象の墓場が荒れる。

 

 

 

 

 

蟻の園             1974年  ハヤカワ文庫
易仙逃里記 中国故事。占い師、親殺し事件の真相が時間犯罪者がらみ。キチンと理解するにはメモが必要。
お茶漬の味 恒星間航行の帰還。地球は機械に支配され人類はごくわずか。若者が茶の木を見つけて未来への希望をつなぐ。
ホクサイの世界 ホクサイの景色にあこがれ時間旅行で日本を訪れた夫婦。2世紀間違え核戦争後の日本へ。
釈迦の掌 同時に2ヶ所に存在出来る時間機で浮気。相手の女性は金を溜めて整形。その後男の妻になるという連環。
蟻の園               団地の13号館で子供が行方不明になるが、13号館は実際には存在しない。我々を見下ろすものの存在。

 

 

 

 

 

神への長い道         1975年  ハヤカワ文庫
神への長い道 文明の滅んだ星にある神殿。何千体もの人の集まり。宇宙の本質への旅を行うための「精神の船」。
宇宙に嫁ぐ            宇宙殖民団体の妻となる女性の、結婚までの話。
宇宙鉱山 強力な宇宙塵流に巻き込まれる宇宙船。実は物資を移送するためのシステム。
再会 宇宙に進出した者の子孫が地球に帰還。外見は全く異なるが、彼らは兄弟。

 

 

 

 

 

 

物体O             1977年  新潮文庫
墓標かえりぬ 左半身しかない男。右半身は別の世界に。男が事故で死に、半分だけの石柱を建てた後、右半分が帰ってくる。
ダブル三角 強くたくましくなる女と、弱くなる男との関係で男女がおのおの性転換して同じ相手に逆の性として交渉を持つ。
物体O 直径千キロのリングが日本に出現。実は知り合いの奥さんのイアリングが巨大化したものだった。
仁科氏の装置 半生をかけてある装置を作る。最後に一度だけ使う。
返還 日本の首相がアイヌに北海道を返還。全世界に波及し、最後にネアンデルタール人に返還して人類は滅びる。
先取りの時代 行事を先取りする風習のパロディ。11月に翌年の4月号etc。
骨                男が職人を使って井戸を掘るが、大量の骨が出る。掘り進むにつれて年代が若くなる。死んでいた男は自分の墓に。
あれ 「あれ」を見た中年サラリーマン。「あれ」とは歴史が形となって現れたもの。
フラフラ国始末記 船を使って独立国家を宣言。

 

 

 

 

 

 

夜の声             1978年  集英社文庫
火星の金 火星に送られた囚人が強盗をして紙幣を強奪。赤い宝石に交換するが、実は紙幣そのものが売り物。
墓場での会合 墓場に幽霊が出るというのでみんなで確認に。実は核戦争後の畸形集団。幽霊は身ぎれいな方だった。
哲学者の小径 学生時代からの友人3人、酒場で学生の3人組に会う。実は若い頃の自分自身であると日記を読み返して判明。
腐蝕 妻を含む町の女性が夜中に外出。宇宙生物による妊娠。
夜の声 同僚が一緒に飲んでいる時に急死。内面の声による指示。人間の意識を「島」として利用する生命体の存在。
廃墟の彼方 終戦時の焼け跡の記憶。その時に見た異様な廃墟。現代で再び遭遇しそこに旧友を見つける。異次元で戦う男。
女狐 狩の途中で会った女性に惹かれる男。千年前の安部清明との連環。
わびしい時は立体テレビ 立体テレビの視聴者。じつはテレビCMの専属タレント。
適応               ある星。植物と共生関係にあった種族を全滅させた代わりに人間が蜂の役割に。

 

 

ゴルディアスの結び目   1998年  ハルキ文庫    単行本初出は1977年(角川書店)
岬にて シャドウ群島の中の小島に住む4家族。皆、様々な経歴を持っていたが、俗世間からスピンアウトしてこの島に居つく。島の外れにある岬から宇宙が見えると言うクワン師。一人の日本人青年が訪れて来たため、波紋を生じる。物質文明と精神文明とのせめぎあい。
ゴルディアスの結び目 好きになった男に裏切られた上、その男の策略で数人にレイプされた少女「K・マリア」 男を殺し、その心臓を引きずり出して食べた少女は角が生え、獣化して病院に拘束されていた。
人の精神に入り込む能力を持つ「伊藤」(サイコ・エクスプローラー)が、少女の精神に入り込んでその本質に肉薄していく。心の闇に潜む強大なエネルギー。
すぺるむ・さぴえんすの冒険 「全人類の生命と引き換えに宇宙の真理を教えよう」と呼びかけられる夢を見る様になった彼−ミスター・A。地球に重大なトラブルが襲い、滅亡する。それを予知した人類はただ一人の人間−ミスター・Aを残して、後は生命情報に置き換え、巨大な宇宙船「地球」号となって宇宙に乗り出した。
「地球」号はブラックホールに向って吸い込まれつつあり、その夢は宇宙意識からの救済の呼びかけだった。ミスター・Aはその呼びかけを断り、人類の情報を放出した後「船」を爆破する。
「果しなき流れの果に」の挿入エピソードのノリか。
あなろぐ・ラヴ  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
   
   
   
   
   
   
   
   
   

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
題未定  小松左京 角川文庫  

これはちょっとイマイチ。物語というより、エッセイ。なぜ「題未定」という題なのか。ラテン語だったかの
ダイミテがどうのとか、他のこじつけとかいう解説が長い。小松ファンでなかったら数ページで「拒絶」もの。
この頃の小松氏はスランプだったとしか言いようがない。

 

 

題名 著者 出版 発表年
こちらニッポン・・・  小松左京 角川文庫  

突然、人の居なくなった街。街だけでなく、それは日本全体。そして、それは世界全体の現象であることが
判明。世界中に残された人類は数十名。システムを再構築していく過程が興味深い。
読後感は案外爽やかだった。

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
首都消失  小松左京 角川文庫  

ある日突然、東京都が筒状の雲に覆われて隔離されてしまう。外界と完全に遮断されてしまった東京。
朝日新聞に連載になった時はかなり喜んで、毎日楽しみにしていたが、雲に遮断されてからの話が非常に
長く、新聞小説のテンポとはかなりかけ離れていたため、結局挫折。
モチーフは彼の短編「物体O」から採用している。

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
継ぐのは誰か?  小松左京 角川文庫  

「チャーリーを殺す」大学の同じ研究室の仲間が、予言のとおり殺される。犯人は誰か?
特殊な能力を持った種族。迫害を避け、つつましく生きてきたが、そこにトラブル。人類が目指すべき形態は何か。
最初読んだ時はかなり新鮮な印象があった。

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
日本アパッチ族  小松左京 角川文庫 1973

鉄を食べる人種「アパッチ族」もう、相当昔に読んだきりなので、ネットで調べて「あー、こんな話だったよな」
という程度のレベルだが、人間がいかにして鉄を消化し、人体構造を「鉄化」していくか、すごい迫力で
描かれていたのは記憶にある。本当らしく見せる、というのがSF作家の真骨頂なのだろう。 

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
見知らぬ明日  小松左京 角川文庫 1973

中国奥地で謎の交戦。内紛かと思われたが、実は宇宙人の侵略。
当初はマイナーな、国レベルの問題だったのが、実態が明らかになるにつれ、国対国、世界としてどう地球を
守るかの話に移行していく。ただ、どう考えても「明日」はないような印象が強く、読後感は暗かった・・・。

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
さよならジュピター  小松左京   1980

近未来の地球。新たな光源を求めて木星を第2の太陽にしようとする計画をめぐる物語。
なんか「エウロパ」に生命を宿らせる(2010年宇宙の旅)のとごっちゃになって、いまいちコメントがあやしい。
映画と小説、どちらも見たが、あまり印象がない。映画の方は三浦友和のダイコンぶりが際立っており、また
教団の教祖(?)がタメゴローみたいなおっさんでワラタ。
  

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
明日泥棒  小松左京   1965

ぼくの家に突然現れた、ヘンなおっさん「ゴエモン」。最初は招かれざる客に対する微妙なリアクションの面白さ。
中盤まではナニワのお笑い路線。後半で話がだんだんシリアスに。
笑わせながらも現代社会、物質文明に対する鋭い批判を織り交ぜながらお話は次第にキケンな方向へ。
最終的にとんでもない決断を迫られる「ぼく」

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
日本沈没  小松左京 カッパノベルズ 1973

一人の科学者が、日本海溝の底で生じている異変に気がつく。次々と起る群発地震。
次第に全貌が明らかになっていく。他でも言ったが、本当に描きたいのは地震の惨状ではなく、沈没によって
国粋意識の強い日本人が世界中に散らばっていく姿。国土を失った者のたどる道。   

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
復活の日  小松左京 角川文庫 1975

細菌兵器が招く、人類滅亡の危機。当時DNA:デオキシリボ核酸、という言葉もメジャーではなく、この数年後に
ようやく言葉として使われる様になった。細菌パニックものの草分け。 

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
エスパイ  小松左京 角川文庫 1977

まあ、軽いノリのSF。超能力者の諜報集団「エスパイ」それぞれのメンバーが特徴ある超能力を使って任務を果たす。
東西の緊張を軸に、指令が下る。
映画化されているが、由美かおるのとびきり素晴らしい体形しか記憶がない。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

題名 著者 出版 発表年
果しなき流れの果に  小松左京 角川文庫 1974

小説を読むためのガイド(自分用)            

プロローグ
±n
中世代の日本、ティラノザウルスが金属の筒を見つける。金色の電話器。

第1章 象徴的事件 
野々村は大泉教授の助手。野々村と番匠谷教授との出会い。中世代の地層から出土した砂の減らない砂時計(クロニアム)。葛城山の中腹、謎のテラス。

第2章 佐世子。現実的結末 
佐世子の来訪。
大泉教授の異変及びその後野々村の失踪(車中から)。
エピローグ(その2)  その後の佐世子。

第3章 事件の始まり 
保安省秘密調査部ムッシュウ・M。保険会社の調査員を装い、研究所をうろついていてつかまる。宇宙空間の研究所へ(エレベータ)。
電子脳衛星5基による内部調査。未来からの干渉を示唆。ムッシュウ・Mが資料衛星No.5を破壊。

第4章 審判者 
第7部部長とアイの会話。「彼」の存在。
選抜者。第26空間「収穫」

松浦。リック・スタイナー
太陽の異変により、火星への避難準備。
ハンス(松浦の親友)。恋人はエルマ。エルマは火星への避難民に選別され、ハンスは選抜委員として地球に残る。終末寸前の時に宇宙人が飛来、連れ去られそうになるが、同時にハンスを引き止める者の存在。
火星避難民の下へも宇宙人が飛来、人類の存続に手を貸すとの申し入れ。評決の寸前に反対票が1票投じられる。驚く宇宙人代表。

第5章 選別 
宇宙人の提供した宇宙船に乗せられた松浦。エルマとの再会。宇宙人に対する疑い。
アイの組織に対する妨害者の存在。地球での収容寸前に選抜者を横取り。選抜は、階梯を進むための手段。
野々村を追うアイ。1960年代のニューヨーク。
リック・スタイナー。宇宙船からある惑星に降ろされる。アントノフ教授。
敵からの襲撃。過去の地球に来たとの推測。

第6章 襲撃 
ルキッフはNの同僚または上司。Nの存在。Nは野々村。時空間を移動して敵と戦っている。
部屋に閉じ込められた松浦。縮んでいく部屋、そして脱出。
第4階梯に進むためのテスト。超人類への道。そこへ攻撃。松浦を助ける声。
ジャコモ。野々村失踪のヒント。Nの人格は?
Nとジャコモ、敵のアジトを襲撃。深追いして危機に。Nは寸前に脱出。
助かった松浦。「声」の話で裏返された空間の存在を知る。声はアイ。
エルマは松浦の子供を妊娠。ハンスは敵側に。

第7章 狩人たち 
I・マツラ。アイと松浦の複合意識体。連邦特別捜査官。
日本沈没のエピソード挿入。「獲物」を探すマツラ。
もうひとつの世界は全て滅んだ。
空襲時の日本。野々村夫婦が外人から子供を預かる。
Nは恐竜時代に出現。金色の電話器に応対。外には恐竜。
Nを追うI・マツラ。宇宙のはてからはてにまで広がる網を張る。
脱出したN。ネグロイドに捕まる。
ホアンと会い、ルキッフが後継者をNに選んだことを知る。
この場所は日本である事を教えられる。
エネルギー恒存則。全宇宙に渡って網を張るマツラ。

第8章 追跡 
マツラが辺峡の惑星に調査に向かう。ワゴオとの会話。番匠谷教授のテレビ残像。
この地はかつてのパリ。
ワゴオの降等の原因となる事件についての証言。
日本にいるNの状況。葛城山での移動装置準備。
エン。
マツラ。網を絞り込む。
リック・スタイナーとの再会。N、エン、ホアンの脱出準備。

第9章 狩りの終末 
過去のフィードバックを提案するN。
迫る追跡の手。
Nとホアンは時間機で脱出を試みる。
戦国時代に果心という怪人物として紛れ込むホアン。
追い詰めるマツラ。ホアンは毒を飲み自決。
Nは脱出。
タウ・ケチ第5惑星。時間密航者クラブ。
ノアヴィル氏の演説(実はN)。
追跡を受け、2台の時間機を接続し無謀な脱出を敢行。

第10章 果しなき流れの果 
すさまじい勢いで未来に運ばれる野々村。
呼びかける意識。超意識の刈り取り、収穫。
Nの意識を吸収した第2階梯超意識体アイは、違和感を感じ、松浦と野々村が親子であった事を知る。

「上昇」をはじめるアイ。「とまれ」制止する階梯概念。
燃え尽きるアイ。

エピローグ(1)
アルプスで発見された東洋人が50年振りに覚醒。
日本に戻り、葛城山麓に戻る。佐世子のもとに行き、居付くことになる。
最後に自分の長い物語を語り始める・・・・・


コメント
初めて読んだのは二十代前半。その後延々と読み返し、多分10回以上は読んでいる。
上記のガイドを読むことなく全体の把握が出来たら、相当な読解力があると自負していい。

この小説のモチーフとなっているのは「
松浦佐用姫伝説」。恋人と別れ、その男を待ち続けてとうとう石になってしまう。羽衣、浦島と並んで3大悲恋物語と言われているもの。松浦は「マツラ」と読む。

テーマは「流れ」。ふとしたきっかけから、時間と空間の交錯する異次元世界に足を踏み込んだ男。
さまざまなエピソードを経て描かれる者たち。その前後関係は複雑に交差し、初めて読む者を混乱させる。
次第に明かされていく「階梯」の概念、宇宙の存在または意識。
小松氏は「日本沈没」に代表される様に、日本人(民族)に対する思い入れの激しい作家であり、「日本沈没」は基本的に、沈没によって自身の棲家を失った日本人が、世界の中でどの様にアイデンティティーを保ちながら生存していくかのドラマ。沈没のドタバタは大した要素ではない。太平洋戦争での敗戦によって国としての根拠を失った時、少年時代を過ごしていた氏の人生観みたいなものが、根底に流れている。

「果しなき・・・・」の中にもその思いはある程度込められているが、最も言いたいのは「宇宙は意識体」という概念。人間が行う、「生きること」(精神活動)は何のためか。生き続けたあと、何が残るのか。「宇宙」という意識体をより高いステージに上げるために、人類を含む生命体の存在意義がある。読み方によっては十分宗教書にもなる。ただ、後半というか最終章では小松氏自身が、疲れたのか自家中毒に陥ったのか、ややまとめに走った嫌いはある。


注、現在「ハルキ文庫」から発行されている(IEBN4-89456-369-X C0193)。

 

 

 

 

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