さぶ 樅の木は残った 青べか物語 ながい坂 火の杯 五瓣の椿 楽天旅日記 彦左衛門外記 風流太平記 短編集 月の松山 花も刀も 花匂う 朝顔草紙 菊月夜 |
山本周五郎について
自分が住み込んでいた質屋の店主の名前をペンネームにしてしまった、彼の敬愛精神。また、直木賞他の文学賞を全て辞退したのも、読者の支持が最大の賞であるとの信念に基づくもの。どの本を読んでも「ハズレ」というものはなく、文庫は多分7割近く読んでいる。「ながい坂」もいい。家康観が変わる。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
花も刀も | 山本周五郎 | 新潮文庫 | 1982 |
短編集「花も刀も」
「落武者日記」
関が原の合戦に敗れ、敵方に捕らえられた男。瀕死のところを娘に助けられるが、結局捕まる。主君の行方を追及された事で主君が逃げ延びている事を知り「主君の居場所を知っている」と家康の前で昂然と言い放つ。その覚悟に男を解放する家康。後に寄り添う娘。
「若殿女難記」
すり替えもの。若殿の替え玉を利用して政権奪取を目論む奸臣。すり替えた筈の男が実は若殿。
「古い樫木」
若者の密会を見つけ、罰を下す太守福島正則。若者の一途な気持ちに神経を逆立てる。樫の老木に清廉さを感じるが、領地没収の仕打ちに逆上。妻に諭されて自分を取り戻し、若者を解き放つ。
「花も刀も」
郷里から江戸の道場に入門している平手幹太郎。自己で編み出した技で上位者を打ち負かすが、却ってうとまれ破門される。千葉周作門下である四天王の一角をなした平手深喜の半生を描いたもの。
「枕を三度たたいた」
家老から金三千両の運搬を頼まれる塚本林之介。陰謀渦巻く中、淡々と荷を運ぶ林之介。途中の事故で頭を打ち、金を隠したまま記憶を失う。結果的に家老の陰謀を失敗させる。
「源蔵ケ原」
茶屋の娘「お光」が川へ身投げをする。若者6人組の人気者だったが、皆で協定を結び抜け駆けを禁止していた。呼び出しを受けて集まる者達の中で次第に真相が明らかになって行く。
「溜息の部屋」
場末の無声映画館の伴奏楽団。女歌手「根来八千代」のために見違える様に明るくなる。
「正体」
人妻に心を寄せていた男。画家だった彼女の夫の死去を受けて彼女の元へ。多数描かれた彼女の絵の中に淫らなものを見つける。彼女から誘いを受ける男。亡き夫が描きたくてなし得なかった彼女の正体がそこにあった。
読んだのは15年以上前か。やっぱり周五郎はイイ。
確かに甘い部分もあるけど、人に対する優しさは、じんわりと心に沁み込んで来る。
基本的に、何を読んでも外れはない。一度は対峙すべき人だと思う。
題名 | 著者 | 出版 | 発表年 |
さぶ | 山本周五郎 | 新潮文庫 | 1965 |
子供の頃から表具の老舗「芳古堂」で働く栄二とさぶ。栄二は幼い頃、火事で両親と妹を亡くし、帰る場所もない。腕は確かで目先が利く。さぶは貧しい農家で何をするにものろま。食い扶持減らしのために家を出された。仕事の出来る栄二は得意先の「綿文」でも人気があり、そこの娘2人のどちらかを嫁にするとの噂も出る。
「綿文」での仕事の最中に、栄二は仕事を外される。不審に思い、追求するが教えてもらえず、自暴自棄になる。栄二は店の金を盗んで女将さんに意見された過去があった。
事件を起こした栄二。身元を黙秘したため、軽度の犯罪者等を隔離する「人足寄場」に送られる。かたくなに自分の殻に閉じこもる栄二。
護岸修理中の事故により栄二は穴の中で岩に挟まれる。命がけで栄二を救おうとする男たち。危ういところで命を救われる栄二。
様々なエピソードの中で次第に心を開いていく。さぶは探し回った揚句何とか栄二を見つけ出し、一緒に仕事をしようと持ちかけるが、寄場のみんなに借りがある、と拒む。
凶悪な男が入り込み、部屋の雰囲気を悪化させる。博打も始まり不穏な空気。小競り合いの末に、栄二が男を撃退。寄場の治安は回復した。
さぶが身元を引き取ると申し出て、栄二は再び世間に。さぶと共に仕事を再開。
かつて「綿文」で中働きをしていたおすえと所帯を持つ。
仕事の目鼻がつき始めた頃、栄二はさぶの書いたものを見る。
あとは読む人のために・・・・・・
コメント
この本も良く読み返す。「さぶ」と言いながら、基本的には「栄二」の話。ただ、愚直で何の取り得もないさぶが、栄二を思うあまり自分の事も忘れて奔走する。世間に背を向けた栄二も、さぶや周りの人間との関わりの中で次第に変化していく。平易な言葉の中に深い愛情が込められている。
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